帰省

最近読んでいた本の中で『伝統』の定義がされており、「伝統は民族の歴史の場において常に普遍性を持つもので、人間的な生き方のあらゆる領域に規範的な意味においてはたらくべきものだ」と書かれていた。日本人が正月に帰省するのが民族の伝統で、人として守るべき規範の一つなのかどうかはわからないが、ここ数年は毎年海外ツアーに出ていて年末年始に実家に帰省するということが無かったので、今年の大晦日は帰省することにした。

また、帰省したら孝行的なことをしたいと伝えておいたところ、障子張りと襖(ふすま)張りの仕事があると言う。しかし、長年障子も襖も無い生活をしてる我らに、手放しでそんな仕事ができるはずもなく、結局二人で父に弟子入りして師匠の元で半日働くことになった。

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まずは家の外まで障子を枠ごと持って行き、シャワーで全体を濡らす。障子のノリはでんぷんでできているので、水を掛けると障子紙を剥がし易くなる。濡らしてしばらく放置した後に剥がれていない紙をタワシでこすったりしながら、丁寧に剥がしていく。

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家の外でしばらく乾かしてから障子枠を部屋に持ち帰り、障子用の糊をボールの中で水に溶かし、障子の枠に塗っていく。

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塗り終わったら、その上に新しい障子紙を張って、紙の四方を枠に沿ってカッターで切る。ちゃんとくっついてない所にはもう一度糊を塗って張り直す。最後に障子全体を霧で吹いて、それが乾くと完成だ。

襖の方はもっと手間がかかる。まずは、襖の枠を外すことから始まるのだが、襖の枠自体に釘が打ってある上、枠同士が組木になっている。また枠と襖本体の繋がり方も複雑なのでなかなか外れない。
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枠と襖の間にマイナスドライバーみたいなものを入れてこじ開け、横から金槌で叩いて枠を外していく。外した枠には、鉛筆で「右上」とか「左下」などと書いておく。次に、もともと張ってあった襖紙を全部剥がす。
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現れたのは、ボロボロになった襖本体だ。師匠によれば、昔この家には襖を破く子供がいたらしい。一説によると、その子供は大人になって妻と共に帰ってきて、妻にそれを直させようとしているそうだ。

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その襖のサイズ通りに、新しい紙の寸法を測る師匠と、師匠の息子の妻。

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上も横も全部奇麗に合わせていく。襖紙は裏面を濡らすと糊がつくようになっているので、奇麗に切ったあとは本体に張り合わせていく。最後に枠をはめて乾くのを待って完成だが、その後は写真を撮る間も無いほど集中していたので写真がない。

一方もう一人の弟子の方は、30年前にパンチして空けたという壁の穴を塞ぎにかかる。
破れた壁
「パチンコに負けた腹いせに、壁にパンチしたら穴が空いてしまったこと」を最後まで内緒にしたまま、余った障子紙で穴を塞ぎ、過去を封印して終了。
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30年も放置せず、もっと早くやっておけば良かった。

夜ごはんは久々のおふくろの味を楽しみ、障子張り&襖張り体験教室は幕を閉じた。
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ムール貝とポテトサラダ、茶筅茄子の揚げ浸し、豚の角煮と巻き寿司をおいしくいただきました。その前に、お昼は豪華な天ぷら入りの年越しそば、3時のおやつは手作りのシュークリームと、手作りのロールケーキ。んー、なんか太りそう。けど多分、ロールケーキはスポンジのようにフワフワなので多分カロリーゼロ。それに、私の体は甘いお菓子や脂肪分を吸収しないので(信じてます。)全く問題ないと思う。

美味かった。
ご馳走様でした。

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