勉強三昧

《M》

最近、Y花がクライミングジムに出かけて知り合いに会うと、私の事故のことを知ってる人は、みんな口を揃えて「旦那さん何やってるの?」と聞いてくるらしい。これまでクライミングしかしてこなかった人(私)が、「休日に運動もできず家にジッとしていて平気なのか?」「ひとりで何をやっているのか?」と思われたとしても不思議ではない。入院中は、多くの方からメールや手紙で温かいメッセージを頂いたのだが、ベッドの上では何もすることが無いと思われていたようだった。加えて今のご時世は、コロナのために面会は全面禁止で、誰もお見舞いに来ることがなかったので、さぞかし寂しい思いをしているだろうと思われている節もあった。

しかし、皆様の予想に反して入院直後から今に至るまで、幸いなことに毎日本を読んだり勉強したりで非常に忙しい毎日を送っている。

怪我をするまで全ての休日はクライミングをしていたし、平日は普通に仕事をしていたので、それ以外のことにはあまり時間を掛けられなかった。おかげで読みたい本が山ほどあり、買ったけどサラッとしか読んでなかった本も多いので、長期の入院はいい機会だと思い、そうした本を読んだり深く掘り下げて勉強する時間に充てることにした。加えてリハビリという名の地味な筋トレは、メニューも徐々に増えてきて、全部やると1時間半ぐらいかかるので、今は毎日時間が全然足りない。もしかしたら、こういう日々のことを充実した毎日というのかも知れないが、それはきっと怪我の功名と言うやつだ。

「ところで何の勉強してるの?」っていうのが、次にくる質問の定番パターンなのだが、「何かの試験や資格を目指しているわけではないけど、興味を持った分野をわかるまで勉強している」というのがその答え。今まで完全に無視してきた教養を、自然と深めたくなる年齢なのかも知れない。入院以来、色々な分野の本を読んできたけど、ここ最近は怪我のこともあって医学と生物学にハマっている。医学にハマるっていうのは言い方が変だけど、一般人が医学を勉強しても良いわけで、今やネットを調べれば結構なことがわかる時代になっているのでありがたい。入院中に先生から受けた説明が非常にわかりやすくて刺激を受けたので、今はそれを自分で調べるようになってしまったということだ。

さて、昨日まで骨の中に血管が通っていることすら知らず、全部カルシウムでできていると思っていた私にとって、骨が再生する仕組みを知ったこと一つをとっても面白い。とにかく医学は全てが新鮮で、調べていくとキリがない。「血液って、骨の中の骨髄で作られてるのかー」程度の理解にとどまらず、さらに調べていくと、骨髄の中にある造血幹細胞から、白血球や赤血球、血小板が作られ、白血球の中にあるNK(ナチュラルキラー)細胞が、ウイルスなどに感染した細胞を検知して、抗体を作る指令を出して外敵をやっつけるメカニズムがあるらしい。これがいわゆる免疫系というやつなのだが、免疫系のメカニズムを調べて、用語と意味と理屈がわかったついでに、日本人がなんで新型コロナにかかりずらいのかを、「交差免疫」という仕組みから説明している記事とかを読み進めてしまうと、あっという間に半日ぐらい経過してしまう。(⇓こんな図をみながら、記事を読んでいる)

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そんなことより、自分の体の骨の再生の仕組みがどうなってるのかも知りたくなってくる。「折れた骨が繋がり、負荷を掛けられるようになるのは3ヶ月後から」と、入院先の医師から伝えられていた一方、手術直後から病院ではリハビリが開始されていた。背骨に負荷を掛けない範囲とはいえ、背骨に振動が来るけど大丈夫かな?・・と思っていたのだが、調べて見ると逆にそっちの方が良いらしい。病院の先生は、骨の再生のメカニズムをわかりやすく簡単に説明してくれてくれて面白かったのだけど、細かいことをネットで調べて見ると、何で早くリハビリを開始した方が良いのかもなんとなくわかってきた。

自分の理解した範囲で、わかったことを書いてみると、

①そもそも通常の骨の細胞は、古くなると「破骨細胞」なるものに破壊されて、破壊された部分に「骨芽(こつが)細胞」が集まって新しい骨が形成され、最終的に元の状態に戻るという代謝が起きている。一つの骨が全く新しい骨に変わるのには3~4ヶ月、全身の骨は3年で全く新しいものに入れ替わるらしい。

②骨芽細胞は、やがて「骨細胞」に変化し、骨細胞同士は互いに繋がって骨の中にネットワークを作る。

③散歩や運動をして骨に衝撃がかかると、骨細胞はメッセージ物質を出してそのネットワークに伝え、信号を受けた「破骨細胞」と「骨芽細胞」が動き出して骨のリモデリング(再生)が起きる。

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④骨には荷重センサーというものがあり、自分の骨をどの程度強くしなければならないかを敏感に感じとっており、その程度に応じてカルシウムをより多く吸収し、骨に沈着させるようになる。※荷重センサーは踵骨で最も敏感に働くので、積極的に歩くことが大事らしい。


※なので、「怪我をしない程度に毎日指に負荷を掛け続ければ、それを支えるように骨も強化されて行くってことだっ!!」ってことで、懸垂バーでオープンフィンガーからクリンプに変化させるトレーニングを毎日やっています。(足は地面についてますが)

宇宙飛行士は宇宙に行くと重力がないために衝撃が伝わらず、リモデリング(再生)が起きないから骨が弱くなるし、寝たきりの人も同様に骨に衝撃が伝わらないから弱くなっていくという理屈らしい。私は入院直後の5日間は寝たきりだったけど、5日目に手術して背骨にチタン合金を入れ、7日目からはリハビリを開始した。入院3週間で病院を出ることになった時も、「歩けるのならば日常生活に体を慣らしてしまった方が、回復が早い」と言われたのだが、どうもそういうことらしい。おそらく適度な刺激を、日々体に与えて行った方が骨は再生しやすいのだろう。「今は、術後から直ぐにリハビリをするのが一般的」という説明も、近年そういうメカニズムがわかってきたからなのかも知れない。

尚、骨は「アパタイト」と「コラーゲン」という二つの素材が規則正しく並んでできており、ある条件下に置くと「アパタイト」と「コラーゲン」は勝手に規則正しく並ぶので、その条件下に置いて人工骨を作っているそうだ。骨は、怪我などで5mm以上失われると自力での再生が難しいため、私のような破裂骨折の場合は、骨の再生を助けるために人工骨を入れている。しかし、正常な骨の細胞から見ると「人工骨」はあくまで異物なので、人工骨の周りに「破骨細胞」がやってきて人工骨を壊し、壊したところに骨芽細胞細胞がやってきて、壊された隙間に骨を作り直すらしい。病院で担当してくれた先生は、単に「2~3か月で人工骨と骨が馴染む」と言っていたけど、何となくメカニズムがわかってきた。まあ、そんなことを日々調べていたりすると、あっという間に時間が過ぎてしまうのでした。

コメント

  1. Ayumix より:

    すごく分かりやすくて面白いです!!
    具体例が多く、RYT200の機能解剖学よりも詳しくて理解しやすい内容で、大変勉強になります!
    ちなみに私も勉強前は骨は全部カルシウムで出来ていると思っていました。
    リハビリガンバです!!引き続き記事楽しみにしていますね!!

  2. より:

    >>Ayumix ありがとう!
    頑張って書いた甲斐がありました。面白いと思った事を書いたので、それを面白いと思って貰えて良かったです。次も頑張るぞ!

  3. Ayumix より:

    >>2
    ブログ♡いつも確認出来るように待ち受け画面にアイコン化しました♡♡♡♡♡
    次も楽しみにしています♡♡♡♡♡♡♡♡

  4. より:

    >>3そんな!待ち受け画面にアイコン化だなんて。
    Y花に頑張ってもらお😁。我が家のブログは二刀流なので。