アメリカ生活にまつわるエトセトラ(後編)

《ゆ》
前編投稿後、だらだらしてたら間が空いてしまったが、苦しいアメリカ生活の後半は、最大の難関である運転について。

車社会のアメリカでは運転のない生活はあり得ない。しかし私は同乗した人誰もが言うくらい運転が下手。左ハンドル、左側通行とかいう問題じゃなく、日本でうまくできないことが、アメリカに来て突然できるようになるわけがない。そんなわけで運転が怖くてしょうがないのに、アメリカ人はクラクションを鳴らしまくる。信号が青になったとき、1秒遅れたらクラクションが長押しされる。特につらいのが赤信号の右折。ニュージャージー州では特別な指示がない限り、赤信号でも右折していい。だがこれは全州共通ではなくニューヨーク州では不可らしい。これが赤で渡っていい右折なのかどうかも分かりにくいし、向こうから車も来るからいつ出ていいかわからないし、自分としては青信号になるまで待ちたい。でも後ろから恐怖のクラクションが鳴らされる。早く青になってくれ!そんなこんなで運転しているとドキドキしてアドレナリンが出まくるので、運転してすぐには寝られない。

そこらじゅうが無料の高速道路みたいなのも難点。一度乗ったら何十マイルも降りれなかったりする。初めてガンクスに行ったとき、心配のあまり待ち合わせ場所に一時間前についてしまった。そこで、近くのスーパーでも見てようかなと思ったら、うっかり高速道路に乗ってしまい、18マイル降りれないことになってしまった。5分先のスーパーに行こうと思っただけなのに合計36マイル(58キロ)の旅。当然待ち合わせに遅れてしまった。

有料道路もわかりにくい。EZ Passと書いてあるレーンがアメリカのETC用のレーンで、Ticket/Cashと書いてあるのがTicketを受け取ったり現金ではらうところなのだが、ニュージャージーからフィラデルフィアに行く高速道路では、EZ PassのレーンにちゃんとEZ Passと書いておらず、Ticketじゃないレーンに入って気づかなかったことがあった。高速を出るときに、「Ticket取るところが見つからなかったので、Ticketない」といったら、4ドルの道だったのに、罰金として38ドルくらい取られた。出口に人が居なくて、コインを投げて支払う出口もある。そのときに小銭がないと、いくらお金を持っていても出られない。パニクっていると後ろのお兄さんが下りてきて、25セントをくれて何とか難をしのぐことができた。

そして極めつけに苦しんでいるのが運転免許。 ニュージャージー州では、審査で特別な問題がない限り、外国人は国際免許と自国の免許を持っていればペーパーテストだけで済む。一方ペンシルベニア州では、みんな実技試験を受ける必要があり、ニュージャージーに出向でよかった!!と心から思っていた。しかし!!!そんな運転下手なことを見抜かれてしまったのか、悪夢が起こった。ペーパーテストを無事に終え、日本の免許を提出して無事パスしたかと思ったところ、私の日本の運転免許を見て、UVでチェックしていた審査の人が、「お前の運転免許はUVで本物か確認できない。セキュリティのため、実技試験を受けてもらう」とか言い出した。そんなバカな、、、、必死で抗議したが聞いてもらえずいったん引き下がる。困って、こちらのコンサルタントに相談したところ、免許のチェックの仕方について調べたら、日本の免許は光で透かすとマークが入っており、UVでは何もも見つからないことが分かった。そこで、改めて審査している人のところに戻り、日本の免許はUVでは何も見えないことを必死で抗議したが、「我々は、UVで確認するように指示をうけていて、それ以外の方法では確認しない」とつっかえされた。コンサルタントに聞くと、運転免許センターの人は、どんなに理不尽でも一度下した判断を変えることは99%ないらしい。「いくらなんでもおかしい!マネージャー出せ!」とかさんざん文句を言い、2時間くらいかけて、鬼の形相でマネージャーのマネージャーがでてくるまで抗議したが、結果としては実技試験をうけないとダメなことに、、、、しかも受けられるのは1か月後。。

理不尽で腹も立つし、不安だし、情けないしやるせない気持ちで帰りの運転をしながら涙がでそうになった。アメリカ嫌い!!格差社会のせいでダメなやつはどんどんダメになり、無能な公務員が増えてこんなことになるんだよ!!!でも、そもそも最初からうまく抗議できなかった自分にも問題がある。どうしよう。実技試験なんて絶対通らない。そういう意味では私に「セキュリティのため実技を受けてもらう」というのは理不尽だけど正しい判断だな。運転できないと生きていけない。どんなに嫌でもこの国であと1年運転しながら生きていかなきゃいけない。どうしよう。このままだと落ち込んでやっていけない。なんとか気分を変えないと。

そういえば村上春樹は、USに住んでいるときに一人で考えているときも英語で考えて言語を習得したらしい。こんな時は気分転換に、今の悲しみを英語で考えてみよう。ところが思いついたのは「I feel sad.」以上。しかもこの国で悲しんでいる人を見たことがないので、これがこういう情けない悲しさに使っていい表現なのかもわからない。思いつくのは「That’s too bad !(そりゃひどい)」とか「It happens(よくあることさ)」、「Everything gonna be alright(まあ全てうまくいくさ)」みたいな、誰かが凹んでいる人に「しょうがないよ」とか「なんとかなるよ」的に慰めている表現しか思いつかない。「情けない」とか「やるせない」って何ていうんだろう。家に帰って調べてみたが、どうしてもぴったりくる英語はみつからない。ふと「バッファロー’66」で主演のビンセントギャロが、ダメな自分、生きづらい世に苦しんでトイレで泣いてるシーンを思い出した。彼は情けなくてやるせない感情に苦しんでた。今の私の気分と一緒だ。あのときギャロは何て言ってたんだろう。そう思って調べてみると、彼のセリフは

「I can’t….I don’t want to live。(生きられない、生きたくない)」だった。

自分と一緒にして悪いなと思った。申し訳ないけど、私は生きたくないってほど苦しんでない。もしかしたら、この国では言ってもしょうがないことは、クヨクヨ悩まず、この程度の感情は「F〇CK!」とか「Shit!」と言って、深く脳で言語化して考えることもなく、あっさり終わらせてしまうのかもしれない。もしそうなら、3億数千万人がそうやって済ませていることを一人でウジウジしているのもバカらしい。郷に入っては郷に従え。こうなりゃ前向きに生きていくしかない!

そんなこんなで、毎日うまくいかないことがありつつ、苦しみながらも何だか前を向いて生きてます。

※そんなこんなでダラダラしているうちに、NJからPAに引っ越ししてしまい、州によって免許の管轄が異なるため、一から出直しになりました。

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