「えッ、海?」
その男は、ロープが1本買えるほどの超高級サンダルを履き、パンチの効いたサングラスとハワイ土産のアロハを羽織って、待ち合わせ場所の稲田堤駅前に現れた。
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そして、これから3日間を過ごす場所に「海」のビジョンを想定していなかった残りのメンバーを驚愕させると、何食わぬ顔で我々の車に荷物を積んで乗り込んできた。本丸はやはり、聖地小川山のマラ岩にあるスペシャリスト13dのようだが、同乗するメンバーが5人もいて、それぞれに目標ルートが異なっているので、まずはアロハともども甲府幕岩に向かう事になった。

初日は、アロハとY花と私で「こけまんじゅう12c」、Meちゃんは「みこすり半12c」、ロッシーは指の痛みが悪化しているので、翌日からの「スペシャリスト13d」に備えた様子見。先週こけまんじゅうをトライした時は、3人ともあと少しで登れるぐらいの勢いになっていたのだが、この日はみんな体が重くて動かない。しばらくは悪戦苦闘を繰り返していたが、今回は珍しく私が一抜けでRP。
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サイズ的にも相性が良く、気温等の条件の良い時間帯に登れたのであっさりクリアできた。その後、アロハを脱ぎ捨てた男が熱い日差しの中でRP。しかし、そうこうしている内に、ルートに日が差して岩の条件が非常に悪くなってしまったため、Y花はこの日のRPを見送り、翌日コンディションが良くなった中で登った。
また、こけまん組とロッシーは、3時ごろから「ザ・ショート」という11cのルートをやりに行った。このルートは途中のホールドが欠けてしまったため、現在は非常に難しくなっている。ボルトはわずか2本しかなく、ワンムーブで1級~初段の核心が出てくるのだが、グレードはよくわからない。アロハも私も全くムーブを起こせない中、様子見中のロッシーが急に覚醒して驚異的なムーブを作って2撃した。
その後、一人でみこすり半に取り組んでいたMeちゃんも、夕方の最終便でRP。
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翌日は、さかもっちゃんも加わって車が2台になったので、甲府幕組と小川山組に分かれた。甲府幕の方は、私とY花とMeちゃんで「アラポテト13a」。気温が高くて暑い上に、3人とも目標ルートを終えたばかりなのでやる気がなかったが、適度にトライしてムーブを作り上げていく。一方、この日から参戦したさかもっちゃんは、みこすり半をRPすると、その勢いでこけまんじゅうもRP。とりあえず、これで皆あのエリアに思い残すことはなくなった。
小川山組の方は、ゲンキくんも加わってロッシーとアロハの3人でスペシャリストをやったと聞いている。ゲンキくんの写真を見る限り、渾身の力でスぺシャリストに取り組み、既に形になっている事が静止画からも確認できた。
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クライミングの写真は不思議なもので、ワンショットを切り抜いたところを見ただけでも、その人が登れる人かどうかがなんとなくわかってしまう。先週、登るところを生でも見させてもらったのもあるが、ボルダリング力が非常に強い。

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ロッシーは、指の悪化を代償に1手づつブランクセッションをなくして全ムーブをバラしたようだが、本人曰く「まだまだ体の強度が足りない」らしい。フィジカル強度のアップ曲線と体や指へのダメージ曲線を比べた場合、ダメージの方の勢いが上回っているのが悩みどころだそうだ。

一方、後から入手できた写真を見る限り、アロハ男が高級サンダルをトレッキング用のシューズに履き替えていたことだけは確認できたのだが、ほんとにクライミングを頑張っていたのかどうかはわからなかった。
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3日目は、私とさかもっちゃんと、N海家でカサメリ沢へ行き、残りの4人は小川山に行った。甲府幕の岩の状態や先週の小川山の状態が思ったほど悪くなかったので、カサメリもまぁまぁイケるかと思ったのだが、湿気湿気のヌメヌメで全然登れない。レマンサル12dをやりに行ったのだが、状態が悪いので2便目で回収し、その後さかもっちゃんと二人で「十手持ち」という11dのルートをやった。

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非常にいいルートだと思うが、指皮も痛く、やる気も萎え気味でRPできなかった。さかもちゃんの方は岩の状態が非常に悪い中、最後まで気力十分で吠えながらRP。良いクライミングが見れた。

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