そんなわけで、精密検査の結果が来る前に、アトモキセチンという薬を40mg1日1回で飲み始めました。調べてみると、ADHDの人の脳では、ドーパミンやノルアドレナリンが不足しており、それが原因で集中力や感情のコントロールが難しくなるそうです。ドーパミンが不足すると、モチベーション低下や長期の報酬を待てなかったりするらしく、ノルアドレナリンが不足すると前頭前野の機能が低下するため、注意力が低下したり、計画や判断が難しくなるそうです。
アトモキセチンはノルアドレナリの再取り込みを阻害し、ノルアドレナリンの濃度を増加させることで前頭前野の機能不全を緩和するという仕組みだそうです。ただ、メカニズム通り、交感神経系に影響を与えるため、血圧や心拍数の上昇があることも。また、抗うつ剤と同じように吐き気・食欲不振などの胃腸症状が出ることが多く頭痛・気分変化も。。。。と副作用満載で大丈夫かなーと思いました。
副作用
そして予定通り、飲んですぐ吐き気が高まり、その後も緩やかな吐き気が一日中続きます。プラセボ効果かもしれないけど、前髪の奥?額の奥?に仮面みたいな層がある感じがして、そこがピンポイントで頭痛。これってもしかして前頭前野に効いてるのかと思うと、なんかギョッとして気持ち悪い感じも。そして一番困ったのが、寝ている間も交感神経が活発化しているのか、眠りが浅い。最近はGarminをスマートウォッチとして愛用しているのですが、驚くほど綺麗に睡眠中の心拍変動が上がっており、交感神経優位になっている!

これはまずいなと思い、1週間後に受診してお医者さんに相談して、夕食後服用から朝食後服用に変更したところ、ちょうど薬に慣れてきたのもあったのか交感神経優位な睡眠阻害は見事なまでに回復し、眠りの質も全く問題なくなりました。

1週間くらい経つと、吐き気も問題なくなり、まろやかな食欲低下がある程度になってきて、頭痛はすっかり消えました。
その後80mgを朝1日1回に増量すると、吐き気はしばらく復活しましたが、寝ている間の心拍変動の異常なさそうで、吐き気も1週間程度でなくなってきました。
個人的な体感としてはカフェイン摂取との併用で交感神経が過剰に活性化するせいか副作用も増幅されるようで、薬を飲んですぐにコーヒーを飲むとドキドキと吐き気感がアップしたり頭痛がするので、コーヒーは飲めなくなってカフェインが半量くらいになる家で作ったカフェオレか紅茶・緑茶に切り替えることになりました。
先に副作用を書いちゃましたが、これは薬の性質上しょうがなく、副作用は初期に出て、効果は4−8週間くらいかかるそうで「これは、『効果ないのに体調悪すぎる!!』って思って止める人多いだろうなー。」としみじみ思いました。私は年末年始のお休み中だったから耐えられたけど、ストレスの多い日常生活では耐えられなかったと思います。
これからアトモキセチンを飲むような方がいれば、ぜひお盆休みみたいな長期休みに始めて、ついでにスマートウォッチで心拍変動を測定しながら様子を見るのをやってみてほしいです。
初期に感じた効果
さて、効果ですが、まず予期してもいなかったのですが、お酒を衝動的に飲みたいという気持ちがアッサリ消えました。ちょうど年末年始休みでストレスも激減していたのですが、その後もストレスがかかっても、緊張するような状況があっても、特に飲みたいなーとは思わず。以前書いた通り、これまでは毎日全然お酒を飲みたいと思っていないのに、突然無性に「今日は帰って飲みたい!」と思うとなかなか止められず、「私ってアルコール依存症だ」と恐怖を感じていたのですが、アトモキセチンによって発達障害特有のアルコール消費問題が緩和されたようです。薬を飲んだ状態の脳であれば、なんで突然衝動的に飲みたくなったりするのか、なんでやめられないのか、自分の心の奥底に原因を探しに行くことができそうですが、薬を飲んでいないときは、冷静にメタ認知するのがめちゃくちゃ難しくて、回避するのにものすごいエネルギーが必要だった気がします。
なお、飲み始めて一ヶ月後くらいに飲み会で久しぶりにお酒を飲んでみましたが、ちょっと飲んだだけで満足し、適量飲んで、次の日からはまた飲まない、という理想的な飲酒ができるようになっていました。アルコール依存症薬としては完璧な効果です。
次に驚いたのが「階段を歩いて登り降りしてる」ということ!自分でも気づいていなかったのですが、薬を飲み始める前は急いでないのにいつも家の階段を駆け上がるか駆け降りており、薬を飲んでしばらく経ったある日「あれ?私歩いて階段登ってる」って気づいてびっくりしたのでした。そういえば、会社の中にある階段もいつも駆け上がってて「元気ですね」って言われてたけど、そっか、これって普通じゃなくて多動だったの???と。
全然自覚していなかったことが、普通じゃなかったことに気づき、私の普通だと認知していたことが普通じゃなかったのかも?と思い毎日衝撃を受ける日々がやってきました。
2-4週間目で感じ始めた効果
そして、精神的な変化も現れ始めました。まず、仕事の集中力が倍増です。これまではポモドーロタイマーと言って「25分集中したら5分休憩、次の25分集中したら10分休憩」というサイクルを使って集中する作業はやっていたのですが、そんなことをしなくても軽く1時間は集中して作業ができるようになりました。相変わらず、一つの作業に集中した後、次の作業に脳を切り替えて移行するのは結構難しいし、瞑想をしても雑念が湧いてきて20分中の最後の5分くらいは暴れ出しそうですが、普通の集中力の継続時間は著しく伸びた感じがします。
それ以上にメリットを感じるのが、駆り立てられるような不安感と焦燥感の軽減です。どうやらアトモキセチンは、開発に失敗した抗うつ薬ということでセレトニンの再取り込みは阻害しないけど、不安や落ち込みにも一定の効果があるという報告もあるそうです。私はかなり不安感が強い方で「お金を増やしたいとは思わないけど現金で貯金してもインフレリスクで価値がなくなったら怖いから少しは投資しないといけないし、でも投資して市場のアップダウンなんか見てたら不安で頭おかしくなっちゃうし、どうしよう」みたいな考えてもどうしようもない不安を引っ張り出して、焦燥感を感じることが多々あります。
薬を飲み始めてからももちろん「あの仕事やってないけど間に合うかなー」とか「今日話した同僚は不快な気持ちになっていないかなー」といった不安を感じはするのですが、不安に囚われっぱなしになったり、駆り立てられるような焦燥感に苛まれるというのは相当軽減されました。
さらに私は「不安になるから過去は振り返れない」と思っていたのですが、薬を飲んで焦燥感が軽減すると、過去を振り返って「あの時はどうだったんだろう」と内省・熟考するのが少し楽になりました。
異なる「主観」で認知するという異常体験
こんな感じで、薬の影響を大きく受けて行動だけでなく考え方も大きく変化してくると、「これまでと違う自分で世界を認知している」と思うような不思議な感覚が出てきました。私は、「状況を俯瞰的に見る」「客観的な視点を持つ」「メタ認知する」、みたいなことを意識的に努力してきたと思うし、そんなに苦手な方じゃないと思うのですが、これまでと違う「主観」で世界を見るというのは強烈な衝撃でした。
どんなに努力しても自分を本当に客観視することは不可能で、自分の認知という歪んだレンズの入った窓を通してしか世界は見えず、窓のサイズやレンズの度が変わると、世界はこんなにも違って認知されるのだと体感することになりました。
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