クライミングを始めた頃、ボルダーというのはルートの核心パートを練習する所から始まったものだと聞いた。
初心者の内はルートをやった方が良い、外まで行ってボルダーやるのはもったいない。けど、1級ぐらい登れる様になったらボルダーも面白いよ、とも言われた。
クライミング上達本にも、高難度のルートを登りたいならボルダーでトレーニングした方がいい、しかし「ボルダラーになってしまわない様に」というただし書きまで付いていた。ジムの仲間にさえ、ボルダーなんて邪道だという奴もいた。
自分はどう考えてたかと言うと、そもそもフリークライミングの「フリー」は道具からのフリーのはずなのに、ルートクライミングはハーネス履かなきゃならないし、ロープも要るし、パートナーも毎回確保しなきゃならない、クラックに至ってはカムをじゃらじゃらぶら下げて全然フリーじゃねーじゃん、と思っていた。ボルダリングこそが究極のフリー、素の自分で唯一岩と向き合える最もフェアなスタイルだと。
ただそれはそれとして、ジムでできる仲間はことごとくルートクライマーだったために、いつの間にかルートしかやらない様になり、ルートを上達させるためのトレーニングに外岩のボルダーを取り入れるなどという、当初聞いていた様なボルダリングの必要性を感じないままルートばかりやってきた。ついでに、今更ボルダーなんてやりたくない、とも…。
ところが、最近になってルートで13aに挑戦できる様になり実際にトライをし続けていくと、外岩のボルダーで1級ぐらい登れる必要性を感じる様になってきた。13a前後で1級が出てくることはあまりないけど、下から10m登ってきた疲れた状態で3級とかを登るのなら、それぐらい登れる力が欲しい。この1年はかなり上達もしたけど、13aでトライしたルートのうち登れたのは半分だった。
アメリカにいるパーソナルトレーナーのYも、もっと強くなりたいならボルダーをやれとしきりに言っている。確かに全て出し尽くしたコロッサスではボルダー力の無さが炙り出され、己れの底も見えてきた。そんなこともあって、今年はボルダーを多く取り入れようと思い、今日は一人で小川山にボルダーをやりに行くことにした。(まあ来週はアメリカでルートの予定ですが。)
ところで、3年前に自分の目標ルートを全部書き出したところ、やりたいルートが40〜50本あったのだが、その中に一つだけボルダー課題があった。それが、「石の魂」だった。ずっと昔に何かの縁で触った時に、いつかこれを登れる様になりたいと思ってからずっと気になっていた。ちなみにY氏はその昔、「石の魂」とその近くにある「AIT」は1日で両方ともフラッシュしたらしい。
で、今日はそれをやりに行った。
5級でアップして早速トライ。
一つ一つのホールドの保持の仕方からしてかなり苦戦。今回は1級バージョンでトライして、ポッケ取りまではできたけど、結局最後ができなかった。
そう言えば、ほとんどの人が2枚積み重ねたマットの上からスタートしていたけど、自分的にはそれは無しだと思い、いちいちマットをずらして下の地面から登っていた。
2枚のマット、踏みつければわずか10cmだろうし、スタートは核心ではないのだけど、それを踏むと最初の負荷が軽くなり少し楽になる。そしてそれが、その後のムーブを楽にする。だが、マット上からのスタートがおかしいと思っても多勢に無勢。完全アウェイ、10人いたら10人そうやっている。みんなそれで登れたことにしているし、ボルダービギナーの自分には何の発言権もない。おかしいと思うのなら、誘惑に負けず自分だけがそれを貫くしかないという世界で、周囲と思いが共有できないのでやや孤独。さすがにノーマットスタイルは無理だけど、積み重ねたマットの上からのスタートは無しだよな。3枚以上は駄目だけど2枚ならいいってのもおかしな話だし…。
まあでも、これは地面からでも多分登れる。
アメリカから帰ってきたらまた行こう。
その後、くじら岩に行ってエイハブ、スパイヤー、芋掘り、シェルライトをやったが結局どれもできなかった。つまらなくなって4時頃撤退。それと同時に雨が降ってきたので、ちょうど良かった。
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