ヴァーチカルダイレクト

≪M≫
このルート、シーサイドのサーカスのラインの左にあるクラックのルートで、3年か4年前に一度トライした時には上部で力尽きた。サンセットエリアののクラックルートは、グレードだけで見ると10b/cの「赤道ルーフ(1P)」があって、次が「気分は最高10c」で、その次のグレードに当るのが10dのヴァーチカルダイレクトなのだが、自分の体感ではキャデラックランチやサーカスよりも怖い面があったという印象だけが残っていた。

それ以降も何回か取り付いたのだが、下部が濡れていてできないことが多く、なかなか本格的には挑戦させてもらえなかった。いつか決着を付けなければいけないと思いずっと気になっていたのだが、気力が充実している時にしかやらない方が良いと思いその時が来るまで待っていた。

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ヴァーチカルダイレクト 10d

最初に登った時に、確かヤバいと感じたところがあったと思うんだけど、あれはドコだったけなーとか思い、最近は1ヶ月くらい前から入念にオブザベをしていた。1週間前からこのルートのことが強く気になり出したので、11日の土曜日にトライをする事にした。最初の凹角のセクションからプロテクションをマメに取り、そちら側からは見えないルートの正面に向かって、事前のオブザベ通りに進んでいく。

壁の正面まで進んで来て思い出した。ここはホールドはいいのだが、プロテクションを決められるところがわかりずらく、モタモタしてると腕が張ってきて危険なのだ。最後に凹角パートで取ったプロテクションが効いてるかどうかがよくわからなくて落ちれないし(実際、今回のトライで凹角パートにセットしたはずのカムの一つは直ぐに外れてしまったようだ)、今いるパートをそのまま上に進んだ場合にレストポイントがあるとは限らない。しかもプロテクションもややキメずらく、もしもちょうど良いサイズのカムを持っていなかったら諦めて先に進むしかない。また、後戻りはできないしランナウトすることになるので絶対に落ちられない。

楽観視できるのは、このルートに10dというグレードがついていること。モタモタせず、先に進めばレストポイントかカムを決める場所があると信じて突き進むしかない。ためらったり弱気になったら落ちるリスクが増えるだけなので、とにかくどうにかしてプロテクションを決めるか、自分の残りの体力を考慮して突き進むかをその場で瞬時に判断して次の行動を決めるべし。

ちょっと上がれば棚があるのだが、そこには碁盤の半分ぐらいの大きさの比較的大きな浮石が棚の上にポンと置いたような状態になっていて、かなり動く。1回目のトライはその後のセクションで失敗したので、終了点まで行ってからこのパートまで降りてきた際に、いっそのことその浮石を下に落としてしまおうかと思ったのだが、良くみるとその浮石がジェンガみたいになっていて、その上に乗ってるフレークの強度が、この浮石によって保たれているようにも見える。こんな浮石がそのままになっているのは、動かせない事情があるということなのではないか・・・。下手に触ると危険なのでそのままにしておいた。

尚冷静に考えるとこのパートは技術的には大して難しくないのだが、カムのセットがしにくかった。
2回目のトライの時には勝手もわかってきたので、カムのセットを端折って次のパートに行ってしまおうかと思ったのだが、危険な匂いのするルートで横着をしてはいけない。念のため、カムとナッツをセットして次に進んだ。その直後、持っていたフレークの一部がパリッと割れてまんまとフォール。横着せずに、ちゃんとカムをセットしておいたので命拾いした。

こうしたフォールはロシアンルーレットみたいなもので、前の人、前の自分のトライが大丈夫だったからと言って次も平気とは限らない。技術的には何でも無くても、こういう脆いルートは危険に常に神経を尖らせながら登らなければならないので、必要以上に力を使うし精神的にも非常に疲れる。その後、一応これ以上壊れそうなホールドが無いことを確認し、上部のパートをノーテンでこなして降りて来た。

その時のフォールでやや気持ちが滅入って今日はもうやめようかなーと思ったのだが、いつまでも決着を後に延ばしたくなかったので、その後3回目のトライをして最後まで慎重に注意を払いながら終了点まで登りきった。

こういうルートはオンサイトしてこそ充実するのかも知れないけどRPで十分だった。
長年の課題に決着が付き、久々に充実したクライミングができた。
本当に面白いルートは危険と隣合わせ。
お勧めしたいルートである反面、自分も含めボルトルートに慣れきっている人には思いもよらない危険が多いと感じるルートでもあった。

コメント

  1. みわ より:

    シーズン中に一区切りして良かったですね! そしてフレークが欠けたとき、無事で良かったです。
    私もいつか心をこめて、集中してトライします。
    (ちなみに私は今年は手をつける前に怪我をして良かったと思っています。今の私の安全管理能力だと死ぬような事故を起こしてたんじゃないかな、と。)

  2. M より:

    細かい事まで書いちゃうのはどうかなー、とは思ったのですが、グレードの割に危険要素が多いと思い書いておきました。それさえ踏まえれば、挑戦しがいのある面白いルートだと思うのですが。

  3. みわ より:

    オンサイトトライする人は見ないでしょうし、大丈夫ですよ。オブザベで威圧される私のレベルだと、とても貴重な情報です。リスクがあっても、なのか、リスクがあるからこそなのか、憧れは増すばかりで困ったものです。

  4. M より:

    このルート威圧的ですよね。そしてやっぱり私も憧れていたところがあります。リスクがあるからじゃないですかね。